弊ロドスに関しまして。

アークナイツ。月パス。月スカ勢の活動記録

第2回経営会議:4月期の昇進の如何について

 四月某日。某役員会議室。
 静寂が支配していた廊下に、突如、足音が響く。
「来たか」
 私は、その足音に心の躍動を感じ、頬が緩む。これから始まる会議の準備は既に整えてある。幾重にも折り重なる資料の数。これらはこれから始まる会議の資料であり、オペレーターが重ねてきた業の数とも云えた。私は会社の経営者であるが、この会議の資料作成だけは、この手で行ってきた。それが会社経営の責任。すなわち部下を死地へと送るものの義務なのだと感じていたからにほかならない。
「バタン」と会議室のドアが無造作に開かれる。入っていく者は全て会社の部長クラス。誰一人、私に笑顔を向ける者などいない。私とは旧知の間柄の者も多いが、これからの会議のことを考えているのだろう。表情に緊張が色が浮かんでいる。
 上座に私が陣取る。向かいあう二列の机に部長達が座る。最後の一人が着席したタイミングで私の口が開く。
「それでは、四月期の昇進会議を行う。まずは、人事部より四月期の新入オペレーターを報告から…」
「はい。そ、それでは四月期の新入オ、オ、オペレ、オポレー」
 私は発言の主である、人事部長。付け加えるのであれば、私の言葉を遮った挙げ句、緊張のあまりに咬みまくった人事部長を睨み付ける。
「よろしい。人事部長。いや、人事担当。君は即刻、降格だ。会議室から出ていくように」
 降格を言い渡された元人事部長は、一瞬、不満そうな表情を浮かべ、弁明をしようとしたが、直ぐに口をつぐんだ。きっと、三月期の会議で、前線送りを言い渡された前任の人事部長のことを思い出したのだろう。前任の人事部長は、きっと今頃、ワニのお腹の中にいることだろう。
「まあいい。四月期の新入オペレーターは、アレーン、プロヴァンス、エイプリル、スルト、ミント、コンビクション、バブル、マンティコア、テキサス、ウィスラッシュの十名だな」
 この程度のことは経営者たるもの部下の説明を受けずとも把握している。当然のことだ。
「このうち、昇進2になっているものは、アレーン、エイプリル、スルト、ミント、テキサスか。昇進1はバブル、マンティコア、ウィスラッシュだな?」
 小さく頷いたり、小声で「はい」と返答するなど。表現方法は様々あるが、私の言葉を部長たちが肯定する。
「よかろう。それでは既存のオペレーターの昇進待ち状況を説明してくれ」
 私の言葉に会議室の室温が一気に下がる。それもそのはず。その役割は人事部長が担っていた。先程、降格処分をしたばかりのため、この場に説明できるものなどいない。しかし、私の言葉は絶対である。この窮地。この火中の栗を拾うものこそが、リーダーの資質を備えているものなのだ。私は試すような視線で部長達を見渡す。誰も私と視線を合わせようとしない。慌てふためき乍ら、会議資料を捲る部長もいる。私は、その仕草に失望し、口を開こうとした瞬間、椅子を引く音が聞こえた。
「星5以上の昇進待ちオペレーターは、レオンハルトイースチナ、ヴァルカン、レッド、ラップランドです」
「ありがとう。攻略部長」
 臆すること無く説明した攻略部長に労う。アの名前を挙げなかった攻略部長はやはり優秀な人材であるようだ。数ヶ月前にアの名前を挙げられた時は、即刻、ウルサスに追放処分となったことを憶えていたようだ。私は攻略部長に続けざまに質問を投げかける。
「ところで、攻略部長。今の攻略状況は」
「はっ。報告させていただきます。現在、サイドストーリー、マリア・ニアールは強襲ステージまで攻略完了。石割周回を実施中であります。メインストーリーは7章まで完了。目下の最大の障害はH6-4の攻略になります」
 H6-4。その言葉に眉間に皺がよる。弊ロドスの前に数ヶ月も居座る難攻不落のステージ。H6-4の存在はこれまで順調に事業を拡大してきた弊ロドスにとって最大の障害といえるだろう。
 しかし、何時までも指を咥えて見ている訳には行かない。弊ロドスの辞書に不可能の文字はない。私は、先程、報告された昇進待ちのオペレーターに、活路を見いだしていた。
「四月期は、レッド、ラップランド。そしてマンティコアを昇進2にする。そして、宿敵、H6-4を攻略する。以上だ。なんとしてでも四月二十九日までにH6-4を突破するぞ!」
 会議は終了した。
 私の掛け声に部長達が昂揚し雄叫びをあげる。

「オールフォービクトリー!! ビクトリーフォーアーミヤ!!!」
「オールフォービクトリー!! ビクトリーフォーアーミヤ!!!」
「オールフォービクトリー!! ビクトリーフォーアーミヤ!!!」

 弊ロドスのスローガンを部長達が野太い声で連呼する。 
 先刻までの静寂が嘘のように廊下が震えている。
 賽は投げられた。
 まっていろ。H6-4。きっと必ず、お前を屈服させてやる。
 そう。全てはアーミヤ様。アーミヤ様の笑顔のため。