逃避
私は有給休暇を取得し故郷に帰省していた。
ただなんとなく。危機契約#3を前に心身ともリラックスさせておきたい。そんな気持ちが切っ掛けであった。
故郷は日本海に面した小さな町だった。ただ、昨今の市町村合併のブームにのり、町から市に変わっていたものの、街並みは自分が幼いころ暮らした当時と変わりはなかった。
両親は私の突然の帰省に驚いた様子ではあったが、すぐに「結婚はまだか?」「孫の顔が早くみたい」などと何時もの無理な要望が繰り返されるようになった。私は少し辟易とした気持ちを切り替えるべく、ボルボのステアリングのステアリングを握ると、一路、海へ向かった。
海も全く以前と変わりはなかった。
流石に5月下旬の日本海には海水浴を楽しむような人もいない。私は誰も居ない砂浜を一人で歩く。思えば物心ついたころから、気がつくと海を眺め想いを馳せるようになっていた。
そして、また。私は様々なことへ思いを馳せていた。
駆逐艦主体の艦隊を組んでいるけど、少しつらくなってきた。スヌープでシャルンホルストを引いたから、それを確定させれば黒鋒主体ということもアリだけど、それ以外の艦をいないので、どうにもならん…
いっそのことダウンズ、コロラド。そしてマカンを引ければ銀翼という手もアリといえばあり。だが、神代もまだまだ引けていない艦に可能性を感じるし。薔薇だってアーク・ロイヤルを主軸にヴァンパイヤと…
プルルル。
携帯の着信音が私を現実へと引き戻す。
「私だ。なになに。ああ。テキサスのS2を特化2にできそうか。わかった。そのまま作業を進めてくれ。危機契約には間に合わないだろうが、その差はどうにかなるだろう。よろしくたのむよ」
森島課長からの報告の電話であった。
いけない。私が今、悩むべきことは危機契約のことである。
一体何を考えていたのだろうか。
やはり海には魔物が棲んでいる…ということなのだろう。私はボルボのステアリングを再び握ると、一路、弊ロドスへと進路をとった。
明日は「先生」になるのだろうか…