弊ロドスに関しまして。

アークナイツ。月パス。月スカ勢の活動記録

稟議:殲滅作戦への理性消費について

 良く晴れた日の午後。 
 あとひと山。あとひと山乗り越えれば、弊ロドスも新たなるステージに到達するだろうと私は信じ、多忙ではあるが充実した午後の執務をこなしてした。
 プルルルーーー
 突然、受話器が鳴る。社内の業務連絡はメッセンジャーを介して行うことが常である。余程、緊急を要する要件なのだろうと察し、受話器を急いで手にする。
「わたしだ」
「添島部長と淵上攻二課長が至急報告があるとのことですが、いかがいたしますか」
 秘書の飯島瑠璃子の声に若干の緊張感を感じる。恐らく添島部長がかなり高圧的な言動で面会を要求しているのだろう。添島は攻略部の部長で、先日の経営会議では苛立ちを抱えている様子であった。たしかに添島は気性の荒い男ではあるが、それは業務に対する責任感の裏返しでもあると私は評価している。事実、彼を攻略部長に推挙したのは私である。彼は一度口にしたことは必ず遣り遂げる。
「淵上が同席ということは… 例のアレか…」
 私は独り言を口にしながら、飯島に指示を伝える。
「報告は今すぐで大丈夫だ。あと、藤堂部長にも同席するよう連絡してくれ」
「かしこまりました。藤堂部長にも同席するよう連絡いたします」「たのんだ」
 藤堂部長は統括部の部長で、社内業務全般の責任者でもある。淵上課長の抱えている案件で至急報告が必要な案件は一つ。

 ”殲滅作戦”である。

 数分後。
 私の対面には添島部長と淵上課長。私の左隣に藤堂部長が座っていた。
「それで報告というのは?」
「殲滅作戦の件です」
 私の問いに淵上課長が答える。
「だろうな。その殲滅作戦がどうかしたか? その緊張した面持ちはクリアの報告ではなさそうであるが」
「申し訳ねえ。ちょっと殲滅作戦に手こずっていて、理性を切らしちゃってな。また、手こずったもんだから、今週分の上限に達してしまってんだ。いいかな? つかっちゃって」
 添島部長は悪びれる様子はない。なるほど。だから至急の稟議として、添島部長と淵上課長が面会を要求してきたのか。添島部長の態度も緊張の裏返しなのであろう。申し訳ないと心から思っているからこそ、軽薄な態度となってしまう。添島部長はそうゆう性なのだ。
「淵上課長、もう少し状況を報告いただいてもよろしいですかな。状況が分からなければ統括部としても助言が出来ません故」
 藤堂部長が淵上課長に説明を促す。理性の消費についての判断は統括部の承認が必要である。稟議となっているのは合成玉の取得上限に達しているにもかかわらず、ステージ攻略の為だけに理性を消費しようとしているからである。藤堂部長は短く咳払いし、こちらに目配せをする。藤堂部長の意図は察しがついた。
「ふむ。たしかに状況が分からなければ統括部も困るだろう。淵上課長、状況はどうなっているんだ?」
 沈黙。妙な間が空く。淵上課長が恐る恐る画面を私にみせた。

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あと1体。あと1体なんです…

「なんと… あと1体ではないか」
「ええ。左様のとおりで。ステージ構成はMN-EX8が多くなったような感じで、攻略の手順、考え方は、ほぼ同じといってもいいほどなんですがね…」
 添島部長がバツの悪そうな顔でこちらを見ている。どことなく愛嬌のある仕草。添島部長の人柄の一端が垣間見られる。本当にいい男だ。
「なんですが、421体も敵が出てくる。そうなると一番の敵は自分の記憶ってヤツになってくるんでさぁ。300体位まではなんてことないんですが、そこを超えるとスキルを使ってたおしていかないと上手くいかなくなって。オマケに腐敗騎士と凋零騎士も最後に登場してきてね。この倒し方も基本的には一緒。まあ、それに気がつくのにも時間が掛かっちゃった…というのも原因の一つっちゃあ、一つなんだけど」
 何時もの威勢が全くなくなってしまった。余程、悔しいのが不甲斐ないと感じているのか。仕方なく助け船を出してやる。
「なんとなく状況はわかった。で、勝算はあるのか?」
 私の問いに添島部長の表情が和らぐ。私は藤堂部長を横目でみる。「仕方ない」といった表情で黙って頷いていた。統括部も了解したと捉えてよいだろう。
「稟議の件、承知した。ただし、純正源石は割るな。スキル特化に必要な素材やアーツ学Ⅲを集めないといけないからな。まあ、自然回復しても今夜はあと一回といったとこか。ああ。あと、マドロックの特化作業も完了したと、ついさっき、喜多村部長より報告があったところだ。これでマドロックも大幅に強化されたな」

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やっとこのスキルのタイミングが掴めてきた

「おっ。それはいいねぇ。もう、間違いねえ。今夜中にクリアしてみせますよ」
「部長。そんな簡単に言わないで下さい。マドロックのルートは解決しても、ロスモンティスがカバーしているルートはまだ、ちょっと安定してないんです。これもどうなることやら」
 添島部長の軽口に淵上課長がむくれる。
「淵上課長、安心して下さい。今、ロスモンティスのS3を特化作業中ですよ。まあ、今夜は無理でも明日の朝なら間に合いますよ」
 目を細め、少し笑みを浮かべながら藤堂部長が淵上部長に伝える。流石、「理性の権化」と謂われる男である。部下の心を上手に捉え、常にポシティブに物事を進めていく。統括部長、藤堂宗義が弊ロドスにいる限り、事業の大きな失敗はあり得ないだろう。
「よろしいかな。では、各自、よろしくたのんだよ」
 私の言葉とともに、各々がソファーから腰をあげる。
 部長連中は、軽く会釈のみだが、「失礼しました」と淵上課長は退室時に深々と頭を下げた。
 私はそんな淵上課長に軽く手を挙げて応えた。
「がんばれよ」
 淵上課長は言葉には発しなかったが、その表情は自信の無さそうな雰囲気はなくなり、もう戦場に立つ男の顔になっていた。