決断
足りない部分は明らかであった。
その足りない部分を補う方法は分かりきっていた。
でも。
いままで目を背けていた事実に向き合わなければ20等級クリアは見えてこないのだろう。
「左のレーンはマドロックに託すしかない」
私は自らの決意を口にした。静まりかえるオペレーションルーム。
そしてヒソヒソと私の決意に異を唱える声がホワイトノイズの様に増幅し、部屋中の空気を支配した。
それが出来れば苦労しない。
オペレーションルームの総意は、こうゆうことなのだろう。私はその総意を否定しない。
たしかに今のレベルでは苦しいだろう。
「まさか…」
藤堂部長は私の意図に気がついたようだ。驚いた様子で私の顔を見ている。
私は黙って頷く。
それだけで、藤堂部長は私の意図の全てを理解したようであった。
直ぐに喜多村部長を呼び寄せ、耳打ちする。
やはり、藤堂部長から告げられた言葉に驚きを隠せない様子であったが、直ぐに意図を理解、部下の水田課長に指示をしていた。
「残りの石を全て集めて、LS-5とCE-5を周回しよう。そうだ、そのとおりだ」
指示を受けた係員も驚いた様子であったが、次の瞬間には私の指示を反芻していた。
「マドロックをレベル70まで上げる」
至ってシンプルな結論。配置制限が厳しいのであれば、レベルで解決しようというのである。
私の指示から小一時間ほどで目標を達成したことが報告された。
大幅にステータスの上昇が確認できた。
「これならば」と私の旨は期待で高鳴ることを感じる。
この決断が吉とでるか今日と出るか。運命の歯車は回り始めていた。