弊ロドスに関しまして。

アークナイツ。月パス。月スカ勢の活動記録

周回の本分

「尽きたのか?」
「ええ。尽きましたとも」
 総括部資源課、菰田銀蔵は悪びれもせず続ける。
「あれだけ特化作業を連日の様にされたら、そら、素材なんてあっというまにスッカラカンですわ」
 では、何故、経営会議でそれを指摘しなかったのか。
 叱責したい念に駆られるが、唇を噛みしめ、ぐっと堪える。
 菰田課長は弊ロドスの最年長者で、年齢はとっくに定年退職を過ぎている。本人は定年退職を望んでいたのだが、私が留意したのだった。
 弊ロドスの資源管理は正に会社経営にとって根源となる要素である。オペレーターの育成。スキルの特化。新規オペレーターのスカウト。全てにおいて資源が密接に関わってくる。
 よって、その資源管理の責任者である資源課の課長には信頼できる人材をあてておきたいのである。そこで白羽の矢がたったのが眼前の菰田課長なのである。
 当時、菰田課長は統括部の部長であり、かの藤堂部長の前任者にあたる人物である。藤堂課長は切れ者というイメージが強いが、菰田課長は穏健派で関係部署との和を重んじる傾向にあった。だからであろう。関係部著との調整においては菰田課長が抜きんでた手腕を発揮していた。その手腕を定年退職で失うことは弊ロドスにおいても重大な損失であり、丁度、資源課長が退職の意向を示していた、というタイミングも絶妙であったのだ。
 最初は渋っていた菰田課長も最終的には弊ロドスの将来を思い、資源課長の任をうけていただいたのだ。
 だから、社内において唯一、叱責しづらい相手なのである。
「そこでだ」
 菰田課長は妙案があるのだろう。黙って続きを促すと
スルトのS3の特化には結構な量の岩を使う」
 岩というのは中級源岩のことである。
「それを中級ではなく初級から集めて加工で中級源岩にしてはどうじゃ」
 1−7を周回する、ということなのだろう。弊ロドスでは創業以来、一環して1−7の周回は行っていなかった。多少の理性効率が落ちても7−2で上級源岩がドロップすることを期待しながら周回することが通例となっていた。それを変えるというのである。
「菰田課長。冗談をおっしゃられてるのですか?」
 私は念の為、釘を刺す。
「ええ。こんなことを冗談ではいっていません。1−7を周回したいと明確にお伝えしているのです」
 交渉術に長けた菰田課長が一切のテクニックを使わずに真っ正面から1−7周回と云っているのだ。ことの重大性を分かっての発言なのだろう。
 現在は感謝祭の期間中なので、周回すればするほどお得な状況であるのは理解している。
 理解はしているのだが、創業以来の伝統を私の代で変えることに二の足を踏む。
 すると。
「迷う気持ちも判らんでもないですがね。弊ロドスにとって本分ってどこにあるんでしょうね。伝統を守って効率の悪い周回を重ねることが本分なんすかね」
 私は菰田課長の言葉に衝撃をうけた。
 たしかにその通りであった。効率の悪い周回を重ねることが本分であるはずがない。
 本分は唯一つ。全ステージのクリアである。 
 その為の手段は、あくまで課程での手段でしかない。
「菰田課長。1−7の件、勝利しました。早速、人材育成部に1−7を周回するよう指示します」
 好々爺は私の言葉に満足そうな笑みを浮かべる。
 しまった。これら菰田課長の交渉術だったのか…
 気がついた時には、すでに菰田課長は私の執務室をあとにしていた。